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Neurologyの検索結果41 - 80 件 / 86件

  • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(7月10日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

    今回のキーワードは,米国イプシロン株はワクチン接種や過去の感染でも感染防御しにくい,がん患者さんでもmRNAワクチン接種で抗体は陽転するが,抗CD20抗体治療では抗体価は上昇しにくい,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の抗体はヘパリンと同じ第4血小板因子領域に結合する,long COVIDはEBウイルスの再活性化によりもたらされる(?),IL-6拮抗薬は入院28日間の全死亡率の低下と関連し,ステロイドと併用して使用する,です. 受容体結合ドメインのL452R変異を有する変異株には,「デルタ株」「イプシロン株」「カッパ株」等があります.「デルタ株」は「懸念される変異株(Variant of Concern;VOC)」に位置づけられます.VOCは,感染性や重篤度が増し,ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した変異株のことです.今回,カルフォルニア州で見いだされた「イプシロン株」も変異により,

      新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(7月10日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
    • オミクロン変異株でも嗅覚伝導路を伝播する脳炎が生じる! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

      岩田一輝先生,吉倉延亮先生らの症例報告がNeurol Clin Neurosci誌に掲載されました.糖尿病と神経疾患の既往がある80歳男性が,意識障害と全身のけいれん発作のために入院しました.頭部MRIでは両側嗅球と嗅覚伝導路に相当する脳実質に異常信号を認めました(図1).COVID-19 PCRは鼻腔ぬぐい液で陽性,脳脊髄液は陰性でした.CIVID-19脳炎と診断し,レムデシビルとステロイドパルス療法を行いました.意識レベルは回復し,認知機能も感染前のレベルまで改善しました.入院33日目に退院しましたが,嗅覚は改善せず,静脈性嗅覚機能検査にも無反応でした. パンデミック初期にも嗅覚伝導路に沿った脳炎が報告されていますし(図2),マカクザルの感染実験でも鼻から入ったウイルスは嗅覚伝導路を介して眼窩前頭皮質まで伝播してしまうことがわかっています(図3)(眼窩前頭皮質はCOVID-19後に萎縮

        オミクロン変異株でも嗅覚伝導路を伝播する脳炎が生じる! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
      • 12の危険因子を意識した認知症予防@世界アルツハイマー月間 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

        若年死亡率の低下に伴い,認知症を含む高齢者の数は増加しています.しかし,教育,栄養,ヘルスケア,ライフスタイルの変化などの改善により,多くの国で認知症の年齢別発症率は低下しています.そして9月は「世界アルツハイマー月間」,世界各地でいろいろな取組みが行われています.Lancet誌でも認知症の予防・介入・ケアに関する提言を行っています.2017年には認知症の9つの危険因子として「教育不足,高血圧,聴覚障害,喫煙,肥満,うつ病,運動不足,糖尿病,社会的接触の少なさ」をエビデンスとともに紹介していましたが,今回,危険因子をさらに3つ追加しました.それは「過度のアルコール消費,外傷性脳損傷,大気汚染」です.論文ではメタ解析とともに,認知症予防の12の危険因子に対する人生のステージごとの取り組みモデル(図)を提示しています.これらの危険因子の予防に取り組むと,世界の認知症の約40%は修正可能とのこと

          12の危険因子を意識した認知症予防@世界アルツハイマー月間 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
        • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(8月7日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

          今回のキーワードは,完全ワクチン接種者におけるデルタ株感染による入院は少ないが,ウイルス排出量は未接種者と同等で,他のひとを感染させうる,イベルメクチンの有効性を示したプレプリント論文のデータ操作の疑いによる取り下げの衝撃,アストラゼネカワクチン接種後に脳炎を呈した3症例の報告,アストラゼネカワクチン接種後の動脈血栓塞栓症の1例報告,抗CD20療法患者では感染後の抗体の陽性化率が低い,米国神経学会のワクチンに関する見解,抗CD20療法下でもワクチン接種はウイルス特異的T細胞反応をもたらすため,ワクチン接種は行うべき,long COVID(後遺症)としての頭痛の有病率は8~16%,です. 今週発表された「入院対象を重症化リスクの高い患者らに限定し,自宅療養を基本とする方針転換」が,分科会に相談もなく決められたことにはやはり失望しました.コロナ禍においてさまざまな分断が指摘されていますが,その

            新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(8月7日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
          • 『新型コロナウイルスワクチン忌避者は1割。忌避者の年齢・性別差、 理由と関連する要因を明らかに:日本初全国大規模インターネット調査より | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry』へのコメント

            世の中 新型コロナウイルスワクチン忌避者は1割。忌避者の年齢・性別差、 理由と関連する要因を明らかに:日本初全国大規模インターネット調査より | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry

              『新型コロナウイルスワクチン忌避者は1割。忌避者の年齢・性別差、 理由と関連する要因を明らかに:日本初全国大規模インターネット調査より | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry』へのコメント
            • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(11月7日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

              今回のキーワードは,「反科学的思考」をもたらす神経機構,こうもりポケモンとハゲタカ・ジャーナル,スパイク蛋白質D614G変異の臨床的意義,好中球の自殺と血栓形成,70日間も感染力のあるウイルスを排出した患者,回復スピードとウイルス特異的抗体の関係,中和抗体の臨床試験の中間解析です. 新型コロナ論文に関する投稿を続けてきた理由はいくつかありますが,ひとつはCOVID-19に伴う神経筋合併症を理解して,見逃さずに院内感染を防ぐべきと考えたためです(今後,感染者が増加し,改めて重要になる可能性があります).もうひとつはテレビやネットにて,後述する「反科学的思考」を見聞きし,正確な科学的事実を共有する必要性を感じたためです.前者についてはだいたい出尽くし,現在,まとめとなる総説を執筆していますが,そろそろ役目を果たしたように感じています.後者に関連して次のような論文を読みました. ◆パンデミックに

                新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(11月7日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
              • アミロイド時計 ―アルツハイマー病発症前のバイオマーカー変化の確定と社会への影響― - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                【米国からのアミロイド時計の報告】 アルツハイマー病(AD)におけるバイオマーカーの変化のタイミングを推定するために,アミロイドPETを基準にして「時計」をつくるというワシントン大学からの試みが,最新号のAnn Neurol誌に報告されています.アミロイドPET陽性コホートの118人(70.4±7.4歳;認知機能障害はうち16%)と陰性コホート(すべての検査でアミロイド負荷が低レベル,かつ検査時に認知機能障害なし)の277人を比較しています.結果として,バイオマーカーの変化は,脳脊髄液(CSF) Aβ42/Aβ40,血漿Aβ42/Aβ40,CSF pT217/T217,およびアミロイドPETでは,推定症状発現の15~19年前に異常が検出されました.つぎに血漿pT217/T217,CSF neurogranin(シナプス関連蛋白),CSF SNAP-25(シナプトソーム関連タンパク質),CS

                  アミロイド時計 ―アルツハイマー病発症前のバイオマーカー変化の確定と社会への影響― - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                • 脳神経内科における燃え尽き症候群の状況(アンケート結果を踏まえて) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                  2020年9月2日,第61回日本神経学会学術大会@岡山において,シンポジウム「働き方改革:今,必ず押さえるべきこと」が行われ,武田篤先生(国立病院機構仙台西多賀病院),三澤園子先生(千葉大学)の座長のもと,下記の3つの講演が発表されました. ① 脳神経内科の状況(燃え尽き症候群のアンケート結果を踏まえて):下畑享良(岐阜大学) ② 女性脳神経内科医における働き方の現状と課題(バーンアウトのアンケート結果から見えてきたもの):饗場郁子先生(国立病院機構東名古屋病院) ③ 医師の働き方改革を巡る医療現場の実際:小野賢二郎先生(昭和大学) 私は以下のことを解説しました. ◆ 米国神経学会の燃え尽き症候群に対する取り組みは,2014年から開始され,主に医師のQOL改善,リーダーシップ教育,政治への働きかけの3つが行われていること. ◆ 日本神経学会も2018年から本邦における先駆的な取り組みを開始

                    脳神経内科における燃え尽き症候群の状況(アンケート結果を踏まえて) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                  • 発症前パーキンソン病を同定し,非定型パーキンソニズムも鑑別できる新たな血漿バイオマーカーの発見!! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                    スウェーデンのルンド大学等のチームがパーキンソン病の発症前診断を可能にするバイオマーカーをNature Aging誌に報告しています.著者らはDOPA脱炭酸酵素(DDC; DOPA Decarboxylase)別名,芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase; AADC)の脳脊髄液レベルが,レビー小体病(LBD)患者(パーキンソン病48名,レビー小体型認知症33名)を正確に同定できること(AUC=0.89;PFDR=2.6×10-13;図1左),ならびに認知機能の低下と関連することを示しています(P<0.05).DDCは外因性のL-DOPAからドーパミンを生成するのに必須の酵素です. また,脳脊髄液DDCは,シード増幅αシヌクレインアッセイ陽性(seed amplification α-synuclein assay)で臨床症状を認

                      発症前パーキンソン病を同定し,非定型パーキンソニズムも鑑別できる新たな血漿バイオマーカーの発見!! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                    • 自己決定能力を失った患者さんの治療方針の決定 ―その変遷と2つの重要な疑問― - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                      New Eng J Med誌最新号に,臨床倫理のオーソリティBernard Lo教授(UCSF)が重要な標題の課題について解説しています.私もLo教授の教科書で臨床倫理を勉強しました(当科では患者さんの自己決定能力の判定もこの教科書の基準により決めています). 解説の前半では治療の自己決定をめぐる考え方の変遷について紹介しています.重要な出来事は,延命治療の中止をめぐる「ナンシー・クルーザン事件」判決(1990)で,これを契機に代理意思決定のための厳格な要件が定められました.これは自動車事故後,植物状態になったナンシー・クルーザン(Nancy Cruzan 当時25歳)をめぐる事件で,両親は娘が植物状態で延命されることを望んでいなかったため,胃ろうによる治療を止めるよう裁判所に訴えたものの,患者による明確かつ説得力のある証拠がある場合に限り,家族が患者のために決定できるという判断が下された

                        自己決定能力を失った患者さんの治療方針の決定 ―その変遷と2つの重要な疑問― - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                      • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(4月29日)mRNAワクチンは感染と異なり自己抗体を誘導しない  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                        今回のキーワードは,2価ワクチンブースターは重症化リスクが高い人の入院・死亡を接種後120日まで抑制する,COVID-19発症後,多くの自己免疫疾患の新規発症リスクが大幅に上昇する,ワクチン接種は感染とは異なり自己抗体の誘導を伴わずに,抗ウイルス免疫の恩恵を受けることができる,XBB.1.16は幼児に多く感染を認め結膜炎を呈する,軽症COVID-19の約4分の1に視覚構成障害を認め,それに対応する脳構造変化や免疫マーカーの異常がある,ワクチンやブースターの接種にもかかわらず,long COVIDはQOLに悪影響し,かつ入院の有無で認知機能障害パターンに違いがある,long COVID患者では,予想に反して若年群での認知機能障害が最も顕著で,不均一である,抗ウイルス剤はやはりlong COVIDの発症を抑制する,です. ワクチン接種の必要性について議論がなされていますが,それを考える上で有用

                          新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(4月29日)mRNAワクチンは感染と異なり自己抗体を誘導しない  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                        • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(7月19日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                          今回のキーワードは,院内ユニバーサル・マスキング,肺外症状,ICUにおける死亡の危険因子,COVID19感染重症筋無力症,壊死性出血性脳症における未知の自己抗体,垂直感染(母子感染)しない理由,小児多臓器系炎症性症候群の成人例,重症例におけるI型インターフェロン反応の低下,トシリズマブ(抗IL6受容体抗体)の観察研究,Moderna社mRNAワクチンの安全性です. 連日,感染者数の増加が報道され,院内感染のリスク増加を考えるととてもストレスを感じます.しかし患者数の増加する今こそ,第1波の際にできなかった日本発の臨床研究や臨床試験を行うべきと思います.しかし世界の臨床試験が登録されるClinicalTrials.govを調べると,直近500のCOVID19関連試験のうち日本発のものは大阪のDNAワクチン(NCT04463472)1つだけでした.英国のRECOVER試験などを手本として,目標

                            新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(7月19日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                          • 頸動脈の動脈硬化性病変の58%からプラスチックが検出され,炎症を増強し,死亡リスクを増加させていた!! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                            学会で横浜のホテルに滞在中ですが,部屋にペットボトルの水がありません.環境に配慮し,プラスチック使用量減少を目指しているとのことです.ちょうど今週号のNEJM誌を読んで,この取り組みは今後極めて重要になると思いました. プラスチック(ポリエチレン,ポリ塩化ビニルなど)は化石燃料が主原料で,多くの有毒な化学添加剤を含んでいます.例として発がん性物質,神経毒性物質,内分泌かく乱物質であるビスフェノール類などがあります.プラスチック廃棄物は環境中に存在し,分解されてマイクロプラスチックやナノプラスチック粒子になります.前者は粒径1 µm~5 mm,後者は粒径1μm未満です.今年1月にPNSA誌に出た論文は,両者をあわせたマイクロ/ナノプラスチック(MNPs)を正確に測定できるようになったという報告で,ペットボトル1本に約2.4±1.3×105粒子(24万個!!)と推定され,その約90%がナノプラ

                              頸動脈の動脈硬化性病変の58%からプラスチックが検出され,炎症を増強し,死亡リスクを増加させていた!! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                            • 抗アミロイドβ抗体「ドナネマブ」も早期アルツハイマー病の認知機能低下を有意に抑制する! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                              イーライリリーは5月3日,TRAILBLAZER-ALZ 2(第3相試験)において「ドナネマブ」が初期アルツハイマー病(AD)患者の認知機能低下を抑制したという結果をプレスリリースしました.対象は60~85歳の軽度認知障害(MCI)または軽度認知症患者で,進行の予測バイオマーカーであるタウタンパクのレベルが「中程度」であった1182人です(恐らく脳脊髄液タウで層別化したのだと思います ⇨ タウPETの間違いでした).主要評価項目はアルツハイマー病評価尺度(iADRS)で,18カ月間で対照と比較して35%の抑制(p<0.0001)を示しました.また副次評価項目(Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes;CDR-SB)も36%抑制しました(p<0.0001).ちなみにレカネマブはCDR-SB の抑制は27%でしたので,より効果は強そうです. さらにドナネマブ群

                                抗アミロイドβ抗体「ドナネマブ」も早期アルツハイマー病の認知機能低下を有意に抑制する! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                              • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月17日)★ウイルスは嗅球から感染し,嗅覚伝導路を通って眼窩前頭皮質まで到達しうる! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                今回のキーワードは,成人の急性期神経筋合併症では脳卒中が多く,小児では中枢神経感染症とけいれん発作が多い,COVID-19に罹患した人は感染1年後の神経学的後遺症およびアルツハイマー病のリスクはハザード比1.42および2.03と高い,健康の回復と労働能力の低下に最も影響した後遺症は疲労と神経認知障害である,感染から1年後に不調の人のほとんどは18ヶ月後でも回復しない,ウイルスは嗅覚伝導路を伝播し,高齢者では眼窩前頭皮質まで進展して認知機能障害をきたす,です. ひとつめの論文は急性期の神経筋合併症についてですが,それ以外はlong COVIDです.COVID-19は認知機能障害(とくにアルツハイマー病)の危険因子になるという根拠がさらに蓄積されています.疲労と認知機能障害はその後の人生に大きな影響を及ぼすこと,さらに18ヶ月後まで経過を追っても回復が難しく不可逆的であることが示されました.ま

                                  新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月17日)★ウイルスは嗅球から感染し,嗅覚伝導路を通って眼窩前頭皮質まで到達しうる! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(1月1日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                  今回のキーワードは,南アフリカのオミクロン株感染の特徴は,若年者や併存疾患の少ない人の感染,入院や急性呼吸器症状の少なさ,重症度と死亡率の低下である,ファイザーワクチンのオミクロン株に対する予防効果はデルタ株より低下するものの70%と維持されている,ファイザー社の経口抗ウイルス薬パクスリモドの前臨床試験~第1相臨床試験の報告,COVID-19の重症化にCD16+T細胞と補体活性化が関与する,COVID-19感染を併発する虚血性脳卒中は多領域病変が多く,機能的転帰は悪化する,パンデミック禍の運動異常症に関するnarrative reviewです. 明けましておめでとうございます.オミクロン株感染が徐々に増加する年明けですが,悪いことばかりではなく,いくつかの光明も見えます.①オミクロン株に対するファイザーワクチンは,報道されたように中和抗体価は大幅に低下するものの,実臨床における入院予防効果

                                    新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(1月1日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                  • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(2月13日);ウイルス感染症は神経変性疾患の引き金となる!     - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                    今回のキーワードは,ウイルス感染症はアルツハイマー病やALSなど神経変性疾患発症の引き金となる,swabサンプルで評価したウイルスの持続感染はlong COVIDと関連がある,Long COVID患者に見出されたウイルス特異的T細胞の残存は,隠れたウイルスリザーバーの存在を示唆する,血液脳関門の破綻はlong COVIDにおける神経障害の出現に寄与する,long COVID発症の危険因子は急性期の重症度,併存疾患,ワクチン未接種である,COVID-19患者の脳梗塞の血栓内にスパイクタンパクがフィブリンとともに認められた,小児における中枢神経系へのSARS-CoV-2ウイルス侵入が初めて報告された,です. 3月13日から「脱マスク」との報道がされています.しかしウイルスが変わったわけではなく,第8波では過去最高の死者数が記録されています.5類への変更や「脱マスク」は高齢者や基礎疾患を持つひと

                                      新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(2月13日);ウイルス感染症は神経変性疾患の引き金となる!     - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                    • COVID-19から脳を守る必要がある@日本認知症学会,札幌市医師会講演会 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                      「COVID-19後遺症としての認知機能障害―病態機序と治療の展望―」という講演をさせていただきました.認知症の新しい危険因子であるCOVID-19について,最新情報にアップデートしご紹介しました.Long COVIDの病態機序はだいぶ明らかになりつつあり,COVID-19は急性期の呼吸器疾患から慢性期の神経疾患としての人体への影響が危惧され始めています.つまりCOVID-19から脳を守ることを啓発する必要があります.札幌市医師会の先生方から非常にたくさんのコメントを頂き,スライドのご希望がありました.こちらからダウンロードいただけます. 以下,講演要旨です. ◆入院患者の認知機能障害を予測する2 つの血液バイオマーカーとしてフィブリノゲンとD-ダイマーが同定された. ◆Long COVIDのなりやすさを規定する臨床的・遺伝学的・免疫学的要因が判明した. ◆Long COVIDは2年間の追

                                        COVID-19から脳を守る必要がある@日本認知症学会,札幌市医師会講演会 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                      • 幼少期のアトピー性皮膚炎が思春期の精神疾患を誘導 ~動物実験でその可能性を証明~ | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry

                                        2020年10月10日 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター (NCNP) 印刷用PDF(1.07MB) 幼少期のアトピー性皮膚炎が思春期の精神疾患を誘導 ~動物実験でその可能性を証明~ 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所疾病研究第4部の橋本興人研究員らは、幼少期のアトピー性皮膚炎によるストレスが脳内炎症反応の応答性増大持続を促し、これが思春期のうつ様症状誘導の原因となる可能性を示しました(図1)。 幼少期のアトピー性皮膚炎は乳児期の代表的な皮膚疾患の一つであり強い掻痒感により生活の質(QOL)を著しく低下させるだけでなく、その後のアレルギー疾患である喘息やアレルギー性鼻炎への引き金になることが知られています。さらに注目すべきは近年の大規模コホート研究により、アトピー性皮膚炎罹患の有無は、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)の合併や、将来の不安

                                          幼少期のアトピー性皮膚炎が思春期の精神疾患を誘導 ~動物実験でその可能性を証明~ | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry
                                        • どうして機能性神経障害は理解されないのか?@TED - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                          神経心理学者のSteph Blanco先生による印象的なTEDトークです.ご自身が機能性神経障害(functional neurological disorder;FND)を14歳のときに発症し,長く患ったものの回復し,その後,多くの患者さんに面会し研究をされておられるそうです.FNDは筋力低下,不随意運動,けいれん発作,感覚障害など多彩な症候を呈します.歴史的にヒステリー,解離性障害,転換性障害,身体表現性障害,心気症,Munchausen症候群,詐病などと呼ばれてきました.しかしかなりの苦痛と障害を伴い,症状は偽りではありません.私もパンデミック以降,多くの患者さんの診療を行っていますが,早い段階で適切に診断し,無益な検査をやめて,次のようなサポートを行えば回復される方も少なくありません. ①患者さんの訴えを真剣に受け止める.② 診断名を明確にし,その根拠を示す(FNDに特有な陽性徴候

                                            どうして機能性神経障害は理解されないのか?@TED - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                          • アミロイドβ抗体療法の有効性と安全性を理解する - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                            教室の勉強会で使用したスライドです(全76枚).1時間のレクチャーを行いました.内容としては,①アミロイドβと抗体療法の基礎,②臨床試験における効果のさまざまな解釈,③アミロイドβ抗体療法の安全性(ARIA,死亡事例,脳萎縮)について提示したあと,最後に「安全な治療を継続して行うために何が求められるか?」を議論しました.私なりに,下記のような医療者,製薬企業への提案も考えてみました. 1. 効果を実感しがたい治療を続けられる工夫を考える 2. 誤解を招く説明を行わない(図) 3. 重篤な副作用を全力で防止する ① 臨床試験に極力ならった患者選択を行う ② ApoE遺伝子検査体制の確立を促す ③ いつまで治療を継続するかの結論を出す ④ 脳萎縮症例のモニタリングと報告,注意喚起をする レクチャー後,学生から教室メンバーまで非常に多くの質問や意見がありました.やはり治療による益と害について,治

                                              アミロイドβ抗体療法の有効性と安全性を理解する - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                            • COVID-19から脳を守る必要がある@新潟医学会総会 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                              新潟大学医学部医学部長の染矢俊幸先生にお招きをいただき,新潟医学会総会で「Long COVIDとしての認知症 ―その病態と対策―」というタイトルの特別講演をさせていただきました(全スライド75枚).認知症の新しい危険因子であるCOVID-19について,最新情報を含めご紹介しました.Long COVIDの病態機序はだいぶ明らかになりつつあり,COVID-19は急性期の呼吸器疾患から慢性期の神経疾患としての人体への影響が危惧され始めています.つまりCOVID-19から脳を守ることを啓発する必要があります.ご参加の先生は衝撃を受けておられたようで,染矢先生をはじめ非常に多くのご質問をいただきました.以下,講演要旨です. ・COVID-19罹患はアルツハイマー病のリスクを2倍程度上昇させる. ・認知症のリスク因子として,高齢者,重症感染,3ヶ月以上の嗅覚障害がある. ・軽症感染でも(気が付かないだ

                                                COVID-19から脳を守る必要がある@新潟医学会総会 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                              • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(5月29日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                今回のキーワードは,IOCの決定は最良の科学的証拠に基づいていない,感染者の入院前評価では酸素飽和度と呼吸数の測定を必須とすべき,brain fog(脳の霧)は患者の約4分の1が経験する,免疫チェックポイント阻害剤使用中のがん患者でワクチンによりサイトカインストームが生じうる,アストラゼネカ・ワクチンでは虚血性脳卒中も生じうる,SARS-CoV-2感染は長寿命の体液性免疫反応を誘導する,です. 権威ある医学誌New Engl J Med誌において「五輪参加者をCOVID-19から守るために ― リスク管理のアプローチが急務」という論文を掲載しました.以下,その内容を紹介しますが,これらの安全性に対する疑義に対し,真摯に,具体的に回答することがまず必要だろうと思います. ◆オリンピック開催に関するIOCの決定は,最良の科学的証拠に基づいていない. New Engl J Med誌はオリンピック

                                                  新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(5月29日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                • なぜ動物実験で有効な脳梗塞治療薬が,ヒトの臨床試験で無効なのか? - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                  標題のテーマはしばしば議論されてきたことであるが,その決定版とも言える論文がドイツからAnnals of Neurology誌に報告された.著者らは,急性期脳梗塞に対する第3相臨床試験を対象として,その前段階に遡って,それぞれの薬剤の早期臨床試験(おもに第2相)と動物実験の3者において,研究デザインや出版バイアス, 検出力(power), true report probability(TRP)等について統計学的に比較している.その結果,単に動物実験と臨床試験は異なるというだけでなく,3つの試験それぞれに違いがあることを明確にした.極めてインパクトのある論文だ. 1)対象となった研究 著者らはNXY-059やONO-2506,エダラボン,アルブミン,尿酸などを用いた第3相臨床試験の50試験を対象とし,その前段階で行われた75の早期臨床試験と,209の動物実験を比較した. 2)評価法は3群で

                                                    なぜ動物実験で有効な脳梗塞治療薬が,ヒトの臨床試験で無効なのか? - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                  • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(4月26日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                    今回のキーワードは,唾液を用いたPCR検査,抗体検査陽性率,新しい神経合併症(ミラー・フィッシャー症候群と急性散在性脳脊髄炎),血管内皮細胞への感染,サイトカイン放出症候群,感染の入り口となる細胞,ACE阻害薬・ARB内服の予後への影響,トランプ大統領が推奨した新薬候補の結末です. ◆ニューヨークのCOVID-19.12病院での入院患者5700名(女性39.7%)の検討.人種は白人39.8%,黒人22.6%,アジア系8.7%,その他28.9%.合併症は多い順に,高血圧(56.6%),肥満(41.7%),糖尿病(33.8%).入院時,発熱30.7%,頻呼吸17.3%,酸素吸入27.8%.退院したか,あるいは死亡した2634名で転帰を評価したところ,ICU管理は14.2%,人工呼吸器装着は12.2%,人工透析は3.2%,死亡は21%(553名).この死亡率は武漢の28.3%(54/191名)(

                                                      新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(4月26日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                    • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(9月11日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                      今回のキーワードは,ワクチン2回接種はlong COVIDの出現を半減させる,ブースター接種は感染リスクを大幅に低下させるが,正しい戦略と言い切るには長期的なデータが必要である,11ヶ月の経過観察で多くの人の嗅覚障害は改善するが,嗅覚錯誤や幻嗅は増加する,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の発症後12週経過すればmRNAワクチン接種が可能,IL-1α/β阻害剤アナキンラは呼吸不全ハイリスク患者の予後を改善する,JAK阻害剤バリシチニブで入院患者死亡率が38%低下する,です. COVID-19における大きな問題として,重症化や死亡を防止する薬剤がなかなか開発できないことが挙げられます.しかしいよいよ光明が見えて来たかもしれません.昨年末,英国から重症者のゲノムワイド関連解析がNature誌に報告され,重症化に関わる5つの遺伝子が同定されました(Nature 591, 92–98 ,202

                                                        新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(9月11日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                      • 神経筋疾患で筋萎縮が著明な患者では,COVID-19ワクチンをどのように接種しますか? - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                        日本神経学会は「COVID-19ワクチンに関する日本神経学会の見解」を第3版に改訂しました.今回の改訂は学会員より寄せられた標題のご質問に対し,日本神経学会筋疾患セクションメンバー(砂田芳秀チーフ)および担当理事(下畑,西山和利先生)が中心となり議論し,回答を追加したものです.以下にご紹介いたしますが,第3版の全文は下記リンクからダウンロードできますのでご活用いただければ幸いです. COVID-19ワクチンに関する日本神経学会の見解 Q. 神経筋疾患で筋萎縮が著明な患者では,COVID-19ワクチンをどのように接種しますか? A.COVID-19ワクチンの適正投与法は筋肉内注射(筋注)とされています.一般的にワクチンの皮下注射は,皮下脂肪層の血管が貧弱で抗原の動員や処理に時間を要するため,筋注に比べて有効性が低く,副反応の発現も多いと言われています1).COVID-19ワクチンでも肥満によ

                                                          神経筋疾患で筋萎縮が著明な患者では,COVID-19ワクチンをどのように接種しますか? - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                        • 睡眠薬スボレキサント(ベルソムラ®)によるアルツハイマー病予防の可能性! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                          アルツハイマー病の発症機序として,アミロイドβの沈着(老人斑)が引き金となり,異常にリン酸化したタウ蛋白が凝集し,神経原線維変化が形成され,神経細胞死に至るという「アミロイドカスケード仮説」が支持されています.睡眠薬の二重オレキシン受容体拮抗薬(OX1R/OX2R デュアルアンタゴニスト)は,アミロイドβを過剰発現するマウスモデルにおいて,アミロイドβと老人斑を減少させることが示されていますが,タウのリン酸化への影響は不明です.今回,米国ワシントン大学から,二重オレキシン受容体拮抗薬スボレキサント(商品名ベルソムラ)がヒト脳脊髄液のアミロイドβ,タウ,リン酸タウに対して効果をもたらすか検証したランダム化比較試験がAnn Neurol誌に報告されました. 参加者は45~65歳の認知機能に障害のない38名で,偽薬群13名(グラフの赤),スボレキサント10mg群13名(青), 20mg群12名(

                                                            睡眠薬スボレキサント(ベルソムラ®)によるアルツハイマー病予防の可能性! - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                          • 特発性小脳失調症を対象とした多施設医師主導臨床試験のご紹介 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                            2021年1月4日から,岐阜大学医学部附属病院では,指定難病の「脊髄小脳変性症」のうち,特発性小脳失調症(これまでは皮質性小脳萎縮症と呼ばれていた疾患です)の方を対象に臨床試験を開始しました.これは特発性小脳失調症のうち,血清中に抗体(抗小脳抗体)を有する患者さんの体のふらつきやしゃべりにくさなどの症状に対して試験薬を点滴し,その効果を観察するものです.この試験は,臨床研究法で定められる特定臨床研究に該当し,すでに認定臨床研究審査で審査され,Japan Registry of Clinical Trials(jRCT)に公表されています(臨床研究計画実施番号 jRCTs031200250). この試験は,岐阜大学医学部附属病院と信州大学医学部附属病院で開始しましたが,現在,さらに2施設で開始の準備中です. 今回の試験では,特発性小脳失調症の診断基準(Yoshida K et al. J N

                                                              特発性小脳失調症を対象とした多施設医師主導臨床試験のご紹介 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                            • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(6月26日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                              今回のキーワードは,人が集まるイベントでは(たとえ誕生日であっても)感染者が増加する,感染6ヶ月後の評価で,Long COVIDによる症状の持続は自宅療養の若年者の52%に見られる,神経症状を認めなくても,全身の炎症は脳内に伝わり,神経変性疾患様の変化をもたらす,成人でも多系統炎症性症候群(MIS-A)が生じうる,SARS-CoV-2ウイルスにより抑制されるオートファジーを標的とする薬剤は,その増殖を抑える,イベルメクチンはCOVID-19 による死亡リスクを62%減少させる,です. 人の集まりでCOVID-19感染が増加する身近な例として,米国から誕生日が報告されました.人の集まりで感染が増加する別の事例として,6月11~13日にG7を行った英国コーンウォールにおける,デルタ株による新規感染者の激増が報道されています(図).英国全体でデルタ株頻度は90%まで増加し,ほぼ置き換わっています

                                                                新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(6月26日)  - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                              • 死を望む人に対し医療者は何をすべきか ~難病の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)~ - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                名古屋大学 勝野雅央教授に機会をいただき,標題のタイトルにて講義を行いました.ELSI(エルシーと読みます)とは,倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)の頭文字をとったものです.「新しい科学技術・医療技術を開発し,社会実装する際に生じうる,技術的課題以外の課題」を指します. 講義ではまず代表的な難病として,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と多系統萎縮症(MSA)を取り上げ,その臨床倫理的問題について解説しました.神経難病において一番影響の大きかった科学技術の実装はなんといってもポータブル人工呼吸器ですが,まずその登場が疾患に及ぼした影響と倫理的問題を議論しました.その後,MSA患者において報道され,患者・家族・医療者に大きな衝撃を与えた医師介助自殺や,ALS患者における嘱託殺人といった事例を紹介し,死を望む人に対し医療者は何をすべきかについ

                                                                  死を望む人に対し医療者は何をすべきか ~難病の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)~ - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                • 神経疾患の危険因子としての起立性低血圧 (純粋自律神経不全症) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                  2月15日の投稿で,若年性認知症の危険因子の1番目が起立性低血圧であることをご紹介し,パーキンソン病に伴う認知症やレビー小体型認知症(DLB)の早期徴候が捉えられた可能性があると記載しました.ちょうどこれに関連する研究が最新のBrain誌に報告されています. 純粋自律神経不全症(PAF)はαシヌクレインが自律神経系の神経細胞・グリア細胞に蓄積し,血管や心臓を支配する交感神経終末からのノルエピネフリン放出障害が生じる疾患で,起立性低血圧を主徴とします.PAFはパーキンソン病(PD),レビー小体型認知症(DLB),多系統萎縮症(MSA)といったαシヌクレイノパチーの前駆症状であることが知られ,将来,これらの疾患を発症する(phenoconversionする)可能性があります.今回,米国および欧州のPAF患者を最長10年間前向きに追跡した縦断的観察コホート研究が報告されました. 罹病期間の中央値

                                                                    神経疾患の危険因子としての起立性低血圧 (純粋自律神経不全症) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                  • Ma2抗体の標的抗原は進化の過程でウイルスから取り込まれ,いまだにウイルス様粒子を産生することで傍腫瘍性症候群をきたす - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                    最新号のCell誌の驚きの論文です.傍腫瘍性神経症候群(PNS)は,担癌患者に合併する神経障害のうち,免疫学的機序により生じる多様な症候群です.さまざまな自己抗体が出現しますが,そのなかでMa2抗体は精巣腫瘍,非小細胞肺がんに認めることが多く,細胞内抗原を認識しています.その抗原は「傍腫瘍性Ma2抗原(paraneoplastic Ma 2 antigen;PNMA2)」と呼ばれます.その遺伝子は中枢神経系で主に発現していますが,上述の腫瘍でも異所性に発現します.この米国ユタ大学からの論文では,PNMA2は進化の過程で,ウイルスがコードする分子がヒトの生理機能として組み込まれてできたこと,そしてそれがいまだに自己として認識されずに免疫の攻撃の対象となりPNSをきたすことが報告されています. 「進化の過程でウイルスがコードする分子が組み込まれた」代表例は,神経細胞のシナプス形成に関わるArc

                                                                      Ma2抗体の標的抗原は進化の過程でウイルスから取り込まれ,いまだにウイルス様粒子を産生することで傍腫瘍性症候群をきたす - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                    • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月10日) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                      今回のキーワードは,N Engl J Med誌の怒り,ウイルスは皮膚上で9時間生存する,肺を満たすゼリーの正体,無症状感染者を生み出すウイルスの巧妙な企み,神経合併症と転帰,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群,筋障害と影響因子,脳におけるウイルスの証明と脳損傷への影響,脳症患者における髄液高力価抗体,レムデシビル試験最終報告です. ◆アメリカにおける失敗とN Engl J Med誌の怒り. 「Dying in a Leadership Vacuum(リーダーシップの真空状態がもたらす死)」というタイトルの論説は,医学雑誌として前例のないものとなった.冒頭に「COVID-19による危機は,各国のリーダーシップを試すものとなったが,ここ米国では,私たちの指導者は対応を失敗し,危機を悲劇に変えてしまった」と書かれてある.実際に米国の死者数は中国をはるかに上回り,カナダの2倍以上,日本の50倍

                                                                        新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月10日) - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                      • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月18日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                        今回のキーワードは,Nature誌がバイデン氏を支持する理由,政治による科学の蹂躙に抗する署名活動,2度目の感染でも重症化する,突発性感音性難聴,脳波と予後,欧州神経学会のエキスパートによるコンセンサス声明の発表,感染から回復しても長期に症状が持続する理由,血管病変や血栓形成機序を明らかにするアカゲザル・モデルです. 最初の2つのトピックスから「政治と科学」がきわめて緊迫した状況にあること,11月3日は世界の科学にとって重大な意味を持つことが分かります.欧州神経学会によるコンセンサス声明は量が多く,全項目は日本語訳できませんでしたが,脳神経内科医は目を通しておくべき内容です.また重症COVID-19に見られるB細胞反応は自己免疫疾患SLEと似た特徴を示し,免疫寛容が破綻し,自己免疫疾患類似の症状をもたらしうるという驚くべき内容です.多彩な神経合併症や,Long-Haulと呼ばれる症状の長期

                                                                          新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(10月18日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                        • 新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(5月2日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                          今回のキーワードは,無症状患者の感染性,低酸素状態の簡便な改善法,個人用保護具の限界,川崎病,新しい神経合併症(主幹動脈閉塞症,筋炎),抗体の動態と検査の意義,ワクチンは諸刃の剣,レムデシビル承認の是非です.経済活動の再開のために一刻も早いワクチン,治療薬の開発が期待されますが,その承認は純粋に科学的根拠に基づいて行われるべきです.なぜならこれらは患者の命を縮める恐れもあるためです. ◆無症状患者の感染性.ベトナム・ホーチミンにおいて患者と濃厚接触した14,000名中のうち,鼻咽頭拭い液PCR検査が陽性であった49名のなかから,30名が前方視的研究に参加した.なんと13名(43%!)は経過を通して無症状だった.PCR検査の陽性率を症状の有無で比較すると,無症状感染者のほうが19日目まで陽性率が低く(P<0.001;図1),より早くウイルスが除去されているものと考えられた.また無症状感染者の

                                                                            新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(5月2日)   - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                          • 65歳未満の若年発症認知症発症に関わる15の要因 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                            高齢発症の認知症の約40%は,12の危険因子を修正することによって予防・遅延できる可能性があると言われています(Lancet委員会報告)(過去ブログ).しかし65歳未満の若年発症認知症についてはよく分かっていません.遺伝的要因の関与が大きいものと思われがちですが,本当の原因が何であるか正確には分かっていません. 最新号のJAMA Neurology誌に,UK Biobankのデータを用いた前向きコホート研究が報告されています.35万6052人(!)の参加者を対象とした8年間の追跡調査の結果です.485例の若年発症認知症が認められ,10万人・年当たりの発症率は16.8人でした.発症率は40歳から5年ごとに増加し,女性よりも男性で高率でした.そして図に示す15の因子が発症と有意に関連することが分かりました.最も強力な危険因子が起立性低血圧で,ついでうつ病,アルコール中毒,脳卒中と続き,遺伝要因

                                                                              65歳未満の若年発症認知症発症に関わる15の要因 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                            • コロナ5類移行1年 後遺症のメカニズムと治療の現在@読売新聞 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                              COVID-19が感染症法上の5類に移行して昨日で1年経ちました.読売新聞から取材いただき,後遺症について現在までに分かっていることについて解説し,コメントをしました. 下畑 享良・岐阜大教授(脳神経内科)は「ウイルスによる炎症が長引き、脳にダメージを与えることで、疲労や認知機能の低下などの神経症状が続くと考えられる。後遺症の深刻さを踏まえると、引き続きこまめな手洗いなど基本的な予防対策が重要だ」と話す。(こちらから記事全文が読めます) 図1はカナダからのデータですが,再感染するたびに後遺症の累積リスクが増加することも分かっていますので,やはり感染予防は大切です. また記事には後遺症(いわゆるlong COVID)は「メカニズム不明」と書かれてしまいましたが,かなり判明していて,単一のものではなく,①持続感染,②自己免疫,③ウイルス再活性化(EBV,HHV-6など),④セロトニン欠乏(*)

                                                                                コロナ5類移行1年 後遺症のメカニズムと治療の現在@読売新聞 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                              • 運転中に発症した脳卒中を診るとき確認すべきこと - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                                日本内科学会第252回東海地方会に参加しました.興味深い症例報告がありました.心原性脳塞栓の既往があり抗凝固療法中のトラックドライバーの男性が,運転中に事故を起こし救急搬送されました.左片麻痺があり,右M2閉塞を認め,脳梗塞が原因でした(NIHSS 11点).ただ最終健常確認時刻より4.5時間が過ぎていたこと,かつ頭部外傷を合併している可能性もあることから担当医はt-PAによる血栓溶解療法を躊躇しました.ところが所属する運送会社の機転でドライブレコーダーの提出があり,左片麻痺を来した様子が写っていて発症時間が特定でき,かつ頭部の打撲もないことも分かりました.このためt-PA療法を施行し,患者さんは速やかに症状が改善,早期に退院できました. 我が国においてトラックドライバーは脳・心疾患による過労死や事故が多い職種として知られているそうです.トラックドライバーに限らず,高齢ドライバーもドライブ

                                                                                  運転中に発症した脳卒中を診るとき確認すべきこと - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文
                                                                                • コロナ後遺症,認知症の早期発症リスク 「脳に影響,インフルと異なる」岐阜大教授が警鐘@岐阜新聞 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

                                                                                  昨日の岐阜新聞の1面に,標題のインタビュー記事を掲載いただきました.学術的にはSARS-CoV-2ウイルスの脳への影響が明らかになってきましたが,行政や一般の方々には伝わっていないように感じておりました.オミクロン株は,死亡率は低下したものの,神経系への影響はデルタ株とあまり変わらないというデータも報告されています(https://bit.ly/3M2yjTP).コロナは「インフルエンザと同じ」ということは決してなく,極力,感染を避ける必要があります.リンクより全文をご覧いただけます.ご一読いただければと思います.

                                                                                    コロナ後遺症,認知症の早期発症リスク 「脳に影響,インフルと異なる」岐阜大教授が警鐘@岐阜新聞 - Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文