物事を深く考えることをやめた私が、自分の思いで人生を変えられるのだと気付くのは、まだまだ先のお話。 自分の不遇に酔って、可哀想な私をすることしかできなかった24歳のころの遠い記憶。夫婦って...何だ? 初めての結婚編 ⑵ - どこか遠くで。 音を忍ばせて玄関の鍵を開け、家人に知られぬようにこっそりと自分の部屋に戻った私を、待ち受けていたかのように部屋に10分もしないうちに父が顔を出した。 子供部屋には鍵はつけておらず、父はノックなどせずに平然と部屋のドアを開く。 ドアから顔を覗かせた父は、嬉しそうこうに言った。 「おぅ、帰ってきたか」 大好きな父の笑顔だった。 思わず泣き出しそうになるのをこらえた私は、少しぶっきら棒に応える。 「うん」 「入っていいか?」 「どうぞ」 父はつかつかと部屋の中央を進むと、窓辺に設置したライティングデスクの椅子を引いて腰掛ける。 「Tから電話があったぞ」 一瞬