TESTSET のファースト・アルバム『1STST』を聴き、私はある不思議な感慨におそわれた。「継承と刷新」が同時におこなわれているような感覚とでもいうべきか。 しかし圧倒的な速度感で駆け抜けるような焦燥感に満ちたアルバムを聴き終わったとき、「いや、まさにこれこそ正しく「バンド」のファースト・アルバムではないか!」と思い直した。古今東西のあらゆる「バンド」は過去の継承と刷新を同時におこなうことで「いま」に切り込んできた。TESTSET も同様だ。彼らは危機的状況=クリティカルな状況からはじまらざるをえなかったバンドである。つまりは状況と過去に対して向き合わざるをえないはじまりだったのだ。 2021年。高橋幸宏の闘病、東京オリンピックにまつわる小山田圭吾の炎上を経由して、彼らの前身である METAFIVE はその活動を休止した。予定されていたセカンド・アルバム『METAATEM』のリリースも