―――しなやかに舞う妖精の関節と消化器官は謎だらけ――― 東京都下にある瀟洒なマンションのチャイムを朝の8時に鳴らす。「どうぞ」という凛とした声とともにオートロックのドアが開いた。部屋の前に着くと、大貫友梨亜さんは扉を開けて待っていてくれた。早朝から押しかけられて迷惑だろうに、笑顔で迎えてくれる。 大貫さんは新体操の日本代表選手だ。東京女子体育大学出身で、現在もOGとして競技をつづけている。ご実家は都内にあるのだが、練習場所である同校の近くでひとり暮らし中だ。彼女が朝食を用意しているあいだ、きれいに片付けられた部屋を見回していると、咎めるような視線が突き刺さる。うら若き女性の部屋におっさんを解き放つ危険性を懸念したのか、普段は同行取材することの少ない担当編集者がくっついてきたのである。 貴重な機会だからきみも目に焼き付けておきたまえと抗弁しているうちに、キッチンからトレイが運ばれてきた。テ