30代になってから、自分が着る服の好みが変わってきた。モードな服が苦手になってきたのだ。デザイン性が強く、濃厚な世界観の服を着ることがどうにもこうにも重く感じられて、その服に心地よさを感じらなくなってしまった。ミラン・ヴィクミロビッチがジル・サンダーのクリエイティブ・ディレクターをしていたころ、『時計じかけのオレンジ』からインスパイアされたシングルのライダースを発表した。シーズンビジュアルにも登場した、そのレアなライダースを僕は持っている(バーニーズのセールで購入)。30代になって数年を過ぎた僕は、ある日その服を着てみた。鏡に映る自分の姿を見て、こう思ったのだ。 「きついな……」 モードな服を着ているおじさんがいて、その姿を見て「痛い……」と思ったことはないだろうか。その感覚だった。自分自身でこの感覚を味わうとは。いやはや、まったくもって面白いよ。デザインは好きなのに、自分にはちょっと違う