政府と国際原子力機関(IAEA)が開いた福島閣僚会議では、原発の過酷事故を防ぐための技術的、制度的な議論が繰り広げられた。だが原発事故の被災地・福島での国際会議にもかかわらず、十六万人の住民避難が続く「福島の今」に目を向けた議論は乏しかった。 政府は会議に先立ち、各国代表団向けに東京電力福島第一原発や除染現場の視察ツアーを組むなど、収束作業の進展をアピールした。こうした取り組みは代表団からも「政府、東電の透明性に感謝したい」(アイルランド閣僚)などと好評だった。 しかし会場となったイベント施設の外に目を向ければ、道路を挟んだすぐ近くに、福島県川内村と富岡町の約六百人が暮らす仮設住宅がある。代表団を乗せた大型バスは毎日、仮設住宅の前を通り過ぎるだけだった。