「気候変動対策が成功するかは、この戦争をどうやって終わらせるかにかかっている」。ロシアによるウクライナ侵攻を「気候戦争」と指摘するのが、斎藤幸平・東京大学准教授(35)だ。「気候」と「戦争」が、一体どうつながっているのか。「人新世の『資本論』」などの著書で知られる気鋭の経済思想家が、ウクライナ侵攻を読み解いた。【聞き手・野口麗子】 インフレで庶民の不満増幅 ――ロシアのウクライナ侵攻によって、気候変動対策にどのような影響が出ているのでしょうか。 ◆言うまでもなく、世界中の関心は「将来の危機であるような気がする」気候変動よりも、目の前の戦況に集まっています。戦争の結果のインフレ、とりわけ食料価格とエネルギー価格の高騰が私たちの生活に重くのしかかる結果、物価の安定を望む声が強くなっているのも当然です。 問題は、気候変動が「将来の危機」ではなく、今すぐ対処しなくてはならない危機だということです。