MAKINO [編]高知新聞社 牧野富太郎は、生涯で40万点の植物標本を収集し、1500種類の植物を命名した、偉大な植物学者だ。彼が監修した植物図鑑は、細密でうつくしいカラー図版が魅力で、いまも愛用されている。「うちにもその図鑑ある!」というかたも多いだろう。 本書は、牧野氏の業績と足跡のみならず、人柄を知ることもできる、「牧野愛」にあふれた好著だ。植物への愛と情熱が強すぎる牧野氏なので、「植物採集に出かけた利尻山であわや遭難」「死後、新聞紙に挟まれた膨大な植物標本をまえに、みんな途方に暮れる」など、周囲の人々を困惑させたエピソードにも事欠かない。植物に魅入られた牧野氏の、破天荒で嫌味(いやみ)のない、愛すべきキャラクターが非常によく伝わってくる。 著者は、牧野氏の周辺人物にも丹念に取材し、牧野氏が行った土地にも足を運んでいる。その結果、本書は、「一人の天才をめぐる群像劇」かつ「旅行記」の