第 7 章 「珍玩鼠育艸」全訳 第7章 「珍玩鼠育艸」全訳 神戸大学大学院医学研究科 神経発生学分野 寺島俊雄 ちんがん そ だてくさ もしミュータントマウスが無ければ医学生物学の研究も、随分と痩せ衰えたものになるだろう。ミュ ータントマウスはヒトの疾患モデルとしての実験材料としてばかりではなく、形態形成、免疫、発癌な ど今日の主要な学間テーマの解明に大きく貢献している。ところがミュータントマウスのルーツをたど ると、江戸時代の京阪神地方の好事家たちが愛玩した変わり種マウスに行きつくと言えば、読者は大い に驚かれることだろう。私は米川博通博士と森脇和郎博士による総説 1)を読み、江戸時代のネズミ好き の風流人が歴史的にみて実験用マウスの育成に大きな貢献をしているのを初めて知った。米川博士はマ ウス発生工学の分野で著名な研究者であり,森脇博士はマウスの系統進化の研究で高名な研究者で