別に映画が公開されるからというわけではないが、最初に少しだけ「新世紀エヴァンゲリオン」の話が必要だ。95年に放送されたあの作品は様々な問題提起を行ったが、当時僕が一番高く評価したのは物語が成立困難になってしまったということをはっきりと示したことである。あの作品はあらゆる物語としてのお約束を意識しつつ演出されながら、しかし主人公がロボットに乗る積極性すら獲得できない。作品にエンドマークがうたれても、作中人物は何らかの結論を視聴者に提供しない。むしろ結論を提供することができないという結論が提供される。 すべてはリアリズムの問題なのだと思う。90年代には(もとを正せば60年代から意識されていたことだが)フィクションが本質的に現実ではあり得ないということが広く一般に意識されすぎた。要するにどんなヒーローも現実としては不自然である。絵空事であって、現実の問題解決の役にたちはしない。分かりやすい結論な