「情熱を注げる何かをずっと探していた。見つけることができて幸せ」と話す恵子さん。活躍の場も増えてきた(奈良県香芝市の特別養護老人ホーム「大和園白鳳」で)=大西健次撮影 関西で唯一、浪曲の定席が開かれる「一心寺」(大阪市天王寺区)のホール。紫の袴(はかま)姿の春野恵子(33)が登場すると、客席から「恵ちゃん、待ってました」と太い声が飛んだ。 初々しく、はにかみながら応える恵子。だが、三味線の前奏が始まると、その表情が一変した。 主人との身分を超えた愛情を信じ切れず、家宝の皿を割って心を試す女中・お菊と、誠を疑われ、逆上してお菊を殺(あや)める主人・播磨の悲恋を描く「番町皿屋敷 お菊と播磨」。物語が進むにつれて、恵子のほおが紅潮し、ライトが額の汗を照らす。 「ブラボー」。左右の手を広げて高々と掲げ、最後の一節を歌い上げると、再び大きな声が飛び、満席の会場を拍手が包んだ。 「ヘトヘトになっちゃっ