■世界はまだまだ広い 1年前、神田道夫というアマチュア冒険家が手製の熱気球による太平洋横断に挑み、洋上で消息を絶った。その彼にスポットを当てたルポルタージュで、第6回開高健ノンフィクション賞を手にした。 石川さんは平成16年1月、神田さんの1回目のフライト挑戦で気球に同乗したが、大海原に不時着し失敗。小さなゴンドラの中で生死の境をさまよううちに貨物船に救助され、一命を取りとめた。 「神田さんと出会い、退路を絶たれた冒険では甘えは許されないと学びました」 冒険家は、前人未到の地に向かって一歩を踏み出す勇気ある人たちだ。リスクは大きくても、自分が生きている証を手に入れようと、激しく生を燃やす。 「白いキャンバスに自分が歩いた軌跡を少しずつ描く、アーティストのようなものです」と石川さん。 でも、冬のアラスカでマッキンリー登頂を目指した植村直己さんの時代にはあったような未踏の地は今や地球上からほぼ