「遊び」と「虚構」 ――カイヨワ『遊びと人間』を読む―― 近藤秀樹 はじめに: カイヨワにおける「遊び」と「虚構」 ロジェ・カイヨワ(Roger Caillois 1913-1978)の著作は驚くほど多岐にわたる。 『人間と聖なるもの』『神話と人間』といった、社会学者としての仕事があるかと思え ば、『詩法』『幻想絵画論』のような、文学や絵画を扱った著作があり、昆虫の擬態につ いて斬新な解釈を示したかと思うと、探偵小説について論じてみせる。残念ながら彼は 「虚構」そのものを主題とした著作を残さなかったが、彼の扱ったテーマには、「夢」 「想像力」「聖なるもの」など、「虚構と擬制」というテーマと関連するものが少なくな い。「遊び」もそのひとつである。 カイヨワの『遊びと人間』(Les Jeux et les hommes, 1958)は遊びの研究の古典で あり、カイヨワ自身の言葉を借りれば「シ