心気症 (特集身体表現性障害) 高橋 徹*国立精神・神経センター名誉所員、国土交通省医務室嘱託(メンタルーヘルス) 日医雑誌第134巻第2号2005年5月 はじめに 医療従事者にとって,心気症は最もよく知られているノイローゼであろう。身体の異常を訴え,病気ではないかと心配して診察を受けに訪れるので,医師は診察をし,時には再三にわたり詳しい医学的検査を行うが,患者が訴える異常や病気を示す医学的な所見が認められないので,心配は杷憂にすぎず,治療の必要はないと懇切に説明する。しかし患者は納得せず,重い病気に罹っているのではないかという考えにとらわれたまま,さらなる診療を執拗に希求するので,どのように対処したらよいのか戸惑ってしまう。 医療を契機に,いわば医原的な契機で始まっている患者の場合は,治療が上首尾に行われた にもかかわらず,患者が問題にしている病気がその治療とは関係がないものであることを