高校時代、同じクラスに無類の映画好きがいた。その彼と修学旅行で同じ班になった。行き先は北海道。函館に到着して班ごとの自由行動になったとたん、彼がこう言った。 「映画観ようぜ」 函館の映画館では『メジャーリーグ』がかかっていた。ロードショーなので東京に戻ってからでも観られる。正直、私はその映画自体には興味がなかった。しかし「東京でも観れる映画をあえて修学旅行中に北海道で観る」というシチュエーションの面白さに惹かれた私は、函館観光を一時中断して一緒に観ることにした。 『メジャーリーグ』はまあまあ面白かった。しかし映画が終わって席を立とうとすると彼がこう言った。 「すっげえ面白れえ。もう一回観ようぜ」 え。 いや、もういいだろう。もう一度観ると自由行動の時間は完全につぶれてしまうし、それになにより二度観るほどの映画じゃないし。そう思った。そう言いかけた。しかし彼のいかにも人なつっこそうな笑顔の裏