〈文〉高岡ヨシ 〈絵〉ミチコオノ *** この世には、タイミングというものが存在する。 タイミングは、透明だ。 無味無臭、その上、音もない。 自分はこれまでの人生で、その「タイミング」というものをことごとく逃してきた。 声を上げるべき時にだんまりを決め、立ち上がるべき時に布団をかぶった。 環境、状況、事情、踵を返す理由はいくらでも転がっていたが、事実としてタイミングを見逃してきたのだ。 タイミングというものは、気まぐれでせっかちだ。 彼らに時刻表はない。 予告もなしに現れて、風と共に去っていく。 そう、つまり、スカーレット・オハラだ。 こうと決めたら突き通す、魅力的な頑固者。 750ccのバイクで疾走する彼女は、コタツに入りチョコレートを食べている自分には見向きもしない。 何かの拍子でハタと気付き、急いで顔を上げた時には、その後ろ姿さえも見えなくなっているのが常だった。 自分が初めてタイミ