二十一世紀のボコノン教 (K. Vonnegut『Cat's Cradle』 (2001 年 12 月, IGC ミューズ)解説、pp.208-211) 山形浩生 「猫のゆりかご」のテーマは、一応は人はいかにして幸せになれるか、ということではあって、そしてその答えとして二種類の道が提示されている。科学(技術)と宗教だ。科学は、語り手がルポを書いている、原爆の父と、かれが発明した原爆およびアイス・ナインによって代表されている。一方、それに対する宗教は、ボコノン教というやつだ。ぼくが初めてこの本を読んだときには、これが大受けして、仲間内ではカラースとかフォーマとか、その手の隠語がしばしやたらにとびかったものだ。 科学は、真理を追究するものだ(と一般に思われているからそういうことにしておこう。ホントはそういうものじゃないんだけれど)。それに対するボコノン教は、ウソの宗教だ。そしてここでのヴォネガ