実際にあったお話です。 「船長、あんたの免状はなんや?」 フェリーの乗客が船長を捕まえて訊く。 「三級ですが・・・・。」 船長は怪訝そうな表情で答えた。 「三級かいな。わしは一級やけどな。」 乗客は聞こえよがしに言ってのけた。 「・・・・・それがなにか?」 船長は困った顔で唇を噛んでいる。 「三級でこんな船の船長できるんか。わしの免状やったらもっと大きい船の船長をできるな。」 乗客が満足げに高笑いをはじめた中、船長は何も言わずにその場を立ち去って行った。 船乗りに免状を訊いて、小型の免状を答える者はいません。 「私の旦那さんは船舶の一級を持ってるんですよ。」 2日前に入った派遣社員のA子は我が事のように自慢げだった。 「ふ~ん、船乗り?」 私はてっきり一級海技士の話だと思ってしまった。しかし、それでも私の友人・先輩・後輩にあっては、そんなものを持った奴は腐る