ジョージ・ワシントン大学で経済学を教えるニック・サボは、その旗に「心理的取引コスト」というふさわしい名前をつけた。簡単に言えば、考えることに費やされるコストだ。人間は生来、怠け者なので、できるだけ物事を考えたくない。だから、私たちは考えずにすむものを選びやすいのだ。『FREE』より 無料のものは非常にスムーズに選択される、と著者は言いたい。細かいことだが、私たちが考えずにすむものを選びやすいのは、「生来怠け者だから」と言うよりも、「考える」ということは エネルギーを使いすぎるから、という方が正確な気がする。真剣に思考することは、血流量その他の生理的なデータから見ても、かなりのコストである。ヒトの脳の相対的な前頭葉の比率からして、そもそも動物は「考える」などということをあまりしないようだ。もともと「考える」ということは動物向きではない行為なのだと思う。 (蛇足だが、「思考停止」という言葉の氾