両極端は一致する。両極端は繰り返す。 巨大宇宙船を建造して星の海を旅することを夢見た父と、伝説のカヌーを復元して北の海を旅することを選んだ息子のドキュメンタリー。交わることのない父子の生き方に、技術主義、自然主義のライフスタイル、世代の断絶を盛り込み、ロードムービーのように再現してみせた二重伝記。 初読のときは息子、ジョージ・ダイソンに寄り添って読んだが、いまは父・フリーマン・ダイソンの視線で読み直す。世界的な物理学者が、息子の成長にとまどい、その感性に驚き、反発する内心を思いやりながら読む。数学と物理学をやり直しているおかげで、父ダイソンの偉大さが分かる。相対性理論と量子力学を統合する数式(ダイソン方程式)を成立させただけでなく、ファインマン・ダイアグラムを数式化して理解を広めた功績は大きい。 しかし、父ダイソンが造ろうとした宇宙船は噴飯ものだろう。燃料ロケットではなく、核爆弾を使うのだ