前夫の暴力を恐れて、33年間出せなかった娘の出生届を役所に提出した神奈川県内の母親に対し、藤沢簡裁(町田俊一裁判官)が、出生後14日以内に届け出をしなかった戸籍法違反で過料5万円を科す決定を出していたことが19日、分かった。法務省の調査では、今月10日現在で無戸籍の人は全国に665人いて実際はそれ以上と見られる。専門家からは「支援を必要とする無戸籍の当事者が、声を上げにくくなる判断だ」との批判が出ている。 代理人の南裕史弁護士(東京弁護士会)によると、母親は1961年に前夫と結婚し、九州地方で暮らしていたが、激しい暴力に耐えかね、80年に神奈川県内に移住。82年に別の男性との間に娘が生まれた。民法772条は、「婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定する」と規定。出生届を出すと戸籍上は前夫の子になるため、娘の存在を前夫に知られることを恐れ、出せなかったという。 昨秋、戸籍がないことに