しばらくして、また仏殿に誰かが入ってきた。 「やはり、気になるのはここだ」 声に聞き覚えがあった。 さっきのリーダーらしき男であった。 「これだけ捜しても見つからないとなると、さっき調べなかったふたの開いていた箱が怪しい」 「なるほど。我々の心理のウラをかいたってわけですね」 「こしゃくなヤツだ。中から引きずり出してボコボコにしてやれ!」 「ははっ!」 ゴトッ、ゴトン。 さっきまで俺が隠れていた唐櫃はひっくり返された。 ガサガサガサ。 ぽい!ぽい!ぽい!ぶわさどわさ!ぶわさどわさ!もぬけのから~。 「あれ?やっぱりいませんよ」 「中にあるのはお経だけです」 そりゃそうだ。 俺はとうに貴様らがあさり済みの唐櫃の中に移動済みなのだ。 「チッ!ここだと思ったのに、いないのかっ」 リーダーらしき男が部下に聞いた。 「ところで、このお経はどんな種類のお経だ?」 「えーっと。大般若波羅蜜多経(だいはん