平成十六年(2004)十一月一日、新一万円札・新五千円札・新千円札が発行された。 一万円札の肖像は、どうしてか福沢諭吉のままであったが、五千円札は新渡戸稲造から樋口一葉に、千円札は夏目漱石から野口英世に替えられた。 中でも樋口は、歴代紙幣登場者中最年少(享年二十五歳)、日本銀行券初の表面女性登場者として注目された。 が、これまで紙幣に女性が登場していないことはなかった。 平成十二年(2000)発行の二千円札の裏面には、紫式部が遠慮気味に顔を出しているし、表面にも一人、明治十四年(1881)に政府が発行した改造一円札などに神功皇后(じんぐうこうごう)が登場しているのである。それまで紙幣に人物の肖像が載ることはなかったので、彼女は日本の紙幣の顔第一号でもあるわけだ。 ではなぜ、神功皇后が最初の紙幣の顔に選ばれたのか? その理由は、彼女の名を国民に知らしめるためであった。 「神功皇后陛下は昔々、