平野屋で徳兵衛は売上金の横領を開始した。 バレないように、少しずつ横領し、その金をお初に預けていた。 でも、程なくしてバレた。 帳面が合わないのを不審に思った平野屋の主人が、徳兵衛を監視していたのである。 「何している?」 徳兵衛がかすめ取った小銭を勘定していたところに、平野屋の主人が登場してやった。 「こ、これは、その、あの……」 とっさにゼニをかき集めて覆い隠そうとした徳兵衛に、主人が言い捨てた。 「クビだ」 「へ?」 「お前のようなヤツは、この店にいらぬ。出て行け!」 徳兵衛は慌てた。 「え、そんな……。じゃあ、結婚の話は? 後継ぎの話は?」 「アホ! だれがお前なんかにかわいい姪や大切な店をくれてやるものか! 見るも汚らわしい! 今すぐ出て行け!」 徳兵衛は平野屋を追い出された。 徳兵衛は天神森(てんじんのもり。露天神社の森)にお初を呼び出した。 「大事な話があるんだ」 「どうした