七月、織田信長は、武田信玄の西上に喜んで挙兵した将軍・足利義昭を山城槙島城(まきしま。京都府宇治市)に攻め、追放しました。ここに室町幕府は滅亡したのです。 「次は浅井だ。今度こそとどめを刺してやる」 信長は休むまもなく近江に矛先を転じました。 「浅井朝倉を倒せば、天下はようやく我が手中に収まる」 「長政を助けに行かなければ」 出陣しようとした私に、朝倉景鏡、魚住景固らが反対します。 「殿、無謀ですぞ。今の信長には勝てませぬっ」 「信玄も将軍も延暦寺もなくなった今、浅井を助けに行くのは死にに行くようなものですっ」 私は言いました。 「それでも私は、長政を助けに行かなければならないのじゃ」 「なぜですか!」 「長政は以前、朝倉の窮地を救ってくれた。――だから助けるのじゃ」 「そこが殿の甘いところですよ! 根本的に信長と違うところですよ! 情とか義理は忘れてください! 忘れなければ朝倉は滅びます