神護景雲元年(767)三月、孝謙上皇改め称徳天皇は、道鏡のために法王宮職(ほうおうぐうしき)を新設した。 「あなたの役所だから、自由に使っていいのよ」 宮職とは、天皇や皇后や皇太子などにしか認められない皇族専用の事務所である。それが法王道鏡のために設置されたということは、彼が完全に公然と皇族になったことを意味するわけである。 また、称徳天皇は東大寺に対抗して西大寺(さいだいじ)を、法華寺(ほっけじ)に対抗して西隆寺(さいりゅうじ)を創建、淳仁天皇の旧皇居・中宮院(ちゅうぐういん)を西宮(さいぐう)として道鏡に住まわせた。 道鏡は躊躇(ちゅうちょ)したかもしれない。 「庶民の私が皇居になんぞ住んでいいのでしょうか?」 称徳天皇は言った。 「いいのよ。どうせ誰も住んでいないし、あなた以上にここに住むのにふさわしい人はいないわ。あなたの望みは分かっているわ。朕の望みも分かっているでしょ。あなたは
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