「人生なんて瞬きするぐらいの長さしかない」と呟いたことのある映画評論家が、その言葉どおり、突然、この世を去った。彼の名は梅本洋一。享年60歳。横浜国立大学教授。元『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』編集長。現在、NHKラジオ番組『まいにちフランス語』の応用編で渋い声を聴かせてくれているあの人だ。情報によると番組の打ち上げの席で突然倒れ、そのまま病院に搬送されて帰らぬ人になったのだという。 1980年代から90年代にかけ、フランス映画を中心とする批評活動の中心にいた人物である。私は大学時代に彼の講義を3年ほど続けて受け、映画を観るということの基本的な姿勢を学んだような気がする。「この映画を観なかったら一体何のために生まれてきたのか」などという挑発的な言辞を吐くのが常であった彼の講義は、映画に対する果てしない情熱に溢れていたように思える。80年代後半にドゥルーズの『シネマ』を精緻に読むなどとい