「口をもぐもぐするようになった」「刺激に反応するようになった」 サリンの後遺症で、大脳はほぼ完全に収縮し、光も奪われ、意識不明のまま寝たきりだった河野澄子さん。松本サリン事件の第一通報者で夫の義行さんにとって、妻の一つ一つの反応や変化が、回復への希望の光だった。しかし、澄子さんが還暦を迎えた今年、その光は静かに消え、澄子さんは息を引き取った。 犯人扱いされ、いたずら電話などに悩まされた義行さんは、勤め帰りに毎日のように療養施設に通い、澄子さんに話しかけ、マッサージをした。ベッドに横たわったままの澄子さんの存在こそが心の支えだった。平成13年、澄子さんが危篤状態に陥り、義行さんは勤務先を退社。講演活動などで全国を渡り歩く一方、介護を行ってきた。 元ピアノ教師の澄子さんのために、義行さんはCDを25枚連続再生できる装置を病室に設置。「脳を刺激できれば」と大好きなジャズやヒーリングミュージ