3月の少し暖かな夕方。フロリダ州アルカディアに暮らすカサンドラ・クアヴは、4輪駆動の自動車に乗り込み、父の所有する牧場を横切ろうとしていた。 クアヴは牧場の風景に目を向けようとしない。彼女は牧草のなかや灌木のまわりに生えている植物だけを見ている。ヒナギクやミント、アナナスやサルオガセモドキ、シダといった植物である。それらの植物ひとつひとつに、クアヴは足を止め、話しかけたり写真を撮ったりしていた。 クアヴは38歳、アトランタ州エモリー大学に在籍する、米国でもトップクラスの民族植物学者だ。そして彼女が眺めている植物は、みな医学に革新をもたらす可能性を秘めているのである。 クアヴは沼のほとりに車を停めた。水面のそこかしこにバラのつるが顔を出している。以前、この池ではワニが現れ、犬やアヒルを襲ったことがあった。 「でも大丈夫ですよ」 沼のほとりを歩きながらクアヴが言った。 「もし見つけたら、私が撃
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