少し前に大学の講義で学生たちに「政治家は場合によっては嘘をついてよいか」と質問をしたことがある。すると多数の学生が「よい」と答えた。少し意外な気もしたが、内心「結構、大人の考え方をしているものだ」などと思ったものである。 もちろん、事と場合によるであろう。国民代表の政治家が国民に対して真実を告げなければならない、というのはいうまでもなく政治家の責務である。しかしだからといって、政治家は常に正直で誠実で国民に対して本当のことを話さなければならない、などというのは子供じみた民主主義の形式論である。実際の政治が実直さだけで動けば政治家の苦労も半減するであろう。政治家に「裏」も「表」もあるのは政治家の責任ではなく、「人間交際」がそのようなものだからである。 アメリカのいわゆる「ネオコン」の思想的支柱と見なされた哲学者レオ・シュトラウスは、政治の場で語られる言葉には、「表に出たもの」と「裏に隠された