男性が女性に性行為を求める場合の、ステレオタイプな口説き文句の一つとして「減るもんじゃないんだから、やらせてくれたって良いではないか」というのがある。あいにく僕はこういう事を言ったこともなければ、身近に聞いたこともないし、もちろん言われたこともないので、本当にこういう文言を女性に言う男が居るのかどうかは定かではないが、ヨコタ村上孝之の「色男の研究」という本を読んでいたら、この「減るもんじゃなし」という口説き文句に関する興味深い記述があった。この文句、実は相当の昔から世の男性どもは女性に口説き文句として囁き続けていたらしい。この文句は実は少なくとも二千年になんなんとする歴史のある口説き文句なのである。オウィディウスは『恋のてほどき』で女たちにこう勧める。「(男どもが)当然瞞すものとしたところで、そなたたちはなにを損するというのか。なにもかももとのままだ。よし千人の男にものにされるにせよ、そこ