実力がまともにぶつかる1対1の将棋というゲームにおいて、トップレベルになるほど、一手の違いが勝敗を大きく左右することになる。それは最近、再び注目を集めたAIによる解析でも、さらに明らかになってきた。7月28、29日に行われた名人戦七番勝負の第4局。初防衛を目指す豊島将之名人(竜王、30)が、終盤に指した一手をきっかけに、逆転負けを喫するという事態が起きた。この一手が生まれた状況は、自分の玉を2カ所のどちらに逃げるかという「究極の二択」。数多くの棋士、関係者、ファンらが衝撃を受ける逆転劇はここで生まれた。 【動画】「究極の二択」と呼ばれた局面 局面はこうだ。豊島名人がやや有利の状況で、挑戦者の渡辺明二冠(36)から持ち駒の金を打ち込まれ、王手飛車取りをかけられた。両方の駒を逃がす策はなく、豊島名人は2カ所ある逃げ場所の、どちらかを選択することになった。王手飛車取りとはいえ、正解ルートを選べば