中学3年の終わり頃、高校の下見に遠くの街に電車で出かけた。遠くの高校に行くかもしれなかったのはぼくともう一人の生徒だったので2人で出かけた。親友というわけではないが、生徒会の役員を一緒にやる程度には友達だった。 その街はぼくの中学のあった田舎とは格段の差のある「都会」で、景色に圧倒されながらその街を歩いていた。 その時、前の方から自転車に乗った若者、おそらくぼくと同じ年頃の一団が奇声を発しながらやってきた。10人くらいの集団だっただろうか。彼らは自転車に乗ったまま、ぼくらとすれ違いざまにぼくの腹をわざわざ蹴って通り過ぎていった。 「何すんだこのやろう!」 と大声をあげたのはぼくであった。 その罵声を聞きつけ、彼らは自転車を止めた。 そして、降りてこっち向かって走ってきたのである。 ぼくは青くなって逃げ出した。 ところが、もう一人は駈け出さなかった。自分が発言したのではないと考えたのだろう。