ソウルのユースホステルには「立ち入り禁止」の地下がある。独裁政権時代にスパイ機関KCIAの拷問部屋として使われた場所だからだ。しかし、いまここに宿泊する観光客はその恐ろしい歴史を知らない。 韓国の過去と現在を象徴 ソウル中心部にあるこのホステルには、魅力がたくさんある。 客室はこぎれいで、予算に限りのあるK-POPファンや、休暇を過ごす家族連れにも手頃な料金で、広さも充分だ。風光明媚で緑豊かな南山(ナムサン)の麓に建ち、屋上からは街のパノラマを一望できる。 ただ、建物の地下に行くのはお勧めしない──。 春には桜が咲き誇り、登山道が整備された南山は、ソウルの観光客に最も人気のある場所として親しまれてきた。だが少し前までは、「南山に行く」と言えば、別の不吉な意味があった。 戦後の独裁政権時代、その言い回しは、民主化運動の参加者を韓国中央情報部(KCIA)に連行し、尋問することを意味していた。拷