新居千秋氏 撮影:AAR編集部 新居千秋氏は日本建築学会賞を受賞した「黒部市国際文化センター/コラーレ」(1994)をはじめ、これまで各地域の文化を象徴する公共施設を数多く手がけてきた。特に近年の大船渡市の「リアスホール」(2008)、および由利本荘市の「ガターレ」(2011)は、ユーザーの要求がデータやダイヤグラムなどの諸元に抽象化されることなく、建築の形態そのものを決定するという、およそこれまでの公共建築の設計のあり方を根本から問い返すプロジェクトとなった。その背景にはペンシルベニア大学でアーバンデザインを学び、ロンドンで都市計画行政に従事した後、帰国し都市計画業務に関わりながら徐々に建築を実現してきた経緯が重要な役割を果たしてきたことはあまり知られていないが、ここでは単体の建築設計をどのように都市や公共、地域や住民と関わらせてきたのか、詳しく経緯を伺うことができた。 聞き手=藤村