上層ブルジョワジー、旧官僚や軍を代表する貴族など広範な層から成る『ドイツ国権派(Die deutschnationalen)』は、その政治的信念において青年ナショナリズムの激烈な突撃精神に対して否定的な態度を示していた。社会問題には他のナショナリストに比べてきわめて無関心であり、民主主義による国民的な民族国家の建設に反対する頑固な反民主主義の集団だった。 国権派ナショナリストは生粋の君主主義者であり、自分たちに権力と特権を保障してくれる支配秩序の代弁者だった。それゆえ帝政時代に彼らがもっていた強大な社会的、政治的地位が共和国によって失われたときこれらを祖国の混沌と道徳的退廃との広がりと捉えていた。 聖なる理想は革命と革命後の嵐の中で無残にもかき消され、国家生活と社会生活の道徳的基盤は失われた。 権威、王権神授説、忠誠、祖国愛、異なる身分の人々の全財産への畏敬は無価値なものとしてガラクタ置場
歴史の公的使用について ドイツ連邦共和国の公式の自己理解が壊れつつある ユルゲン・ハーバーマス Piper社[編](1995)『過ぎ去ろうとしない過去:ナチズムとドイツ歴史家論争』(徳永恂/清水多吉/三島憲一/他訳)人文書院、p.195-211。 『ツァイト』紙の最近号に載ったエルンスト・ノルテの静かな記事を読んだ読者で、『フランクフルター・アルゲマイネ』紙での感情的な議論をフォローしていない人は、歴史上の細かいことが争われているのではなかろうかといった印象を抱くに違いない。しかし、実際に問われているのは、現代史の記述に生じた修正主義を政治の場で実現すること、つまり〔一九八二年の〕政権交替によって、自分たちを転換政府と称する政治家たちが一生懸命せかしていることである。それゆえハンス・モムゼンは、この論争を、「歴史的―政治的思考の組み替え」というコンテクストに置いて論じている。雑誌『メルクー
歴史学的に歴史家の仕事はどのように読まれるべきかという問題は、歴史家が歴史家としてほかの歴史家に対する態度のあり方に関わってくる。次にあげるユルゲン・コッカの「歴史家論争」についてのコメントは、この問題に対するひとつの解答である。長いよ。 ノルテの比較のテーゼが、いかにいい加減に、救いのない仕方で、また部分的に弁護論的に提起されているにもせよ、それがスキャンダルなのではない。本来の挑発は、むしろ次の点にあったし、今なおそうである。すなわち、ノルテは、一方での、時間的に先行する―内戦期およびその後のスターリンの大量テロルの形での―ボルシェヴィキーの「アジア的階級殺りく」と、他方での、時間的にそれに続いて起こった国民社会主義の「人種殺りく」との間に因果連関を設定し、後者を、存続する「アジア的」脅威に対する国民社会主義者の防衛反応、それも理解できなくはない、いわば予防的な防衛反応と解釈しているの
先日、とある人とパレスチナ問題について話していて、その人は日本における反イスラエルの言説が反ユダヤ主義に結びつくことを危惧していたのですが、ぼくはさすがにそんなバカな話はないだろうと、たかをくくっておりました。 でも、あるんですねこういうのって。 ■歴史問題と政治問題の憂鬱な関係、あるいは、歴史的修正主義について http://d.hatena.ne.jp/negative_dialektik/20090317/1237279039 確かにドイツでは1970年代後半のレバノン侵攻以降高まったイスラエルへの批判の一部が、ホロコースト否認論と結びついて問題になったことがあります。日本でも、チベット解放と南京大虐殺否定論が反中という点において結びついているネットウヨクがいるように、それ自体正当なものである批判的言説が歴史修正主義の侵入を許してしまうのは、ありえないことではなかったのでした。 歴史
『ショアー』などの商業的成功も手伝って、一般的には「ホロコースト」「ディアスボラ」といったら、ユダヤ民族迫害が第一義に想像されてしまうのだが、迫害は彼らだけの独占問題ではない。id:hizzz:20090204で書いたように、大戦後は東ヨーロッパに住む多くのドイツ系が暴力的な迫害を受け、ほとんどが国外に追放された。ヨーロッパの20世紀は、少数民族集団に対する暴力が最高潮に達した時代だった。という訳で、遅ればせながら、id:hizzz:20090214前回の続き。 欧米で神聖化したホロコーストの悲劇と、それを金儲けに利用するユダヤ系産業資本を批判して、「ホロコーストの唯一性を主張することは、ユダヤ人の唯一性を主張することになる。ユダヤ人の苦しみではなく、ユダヤ人が苦しんだということが、ザ・ホロコーストを唯一無二のものにする。言い換えれば、ザ・ホロコーストが特別なのはユダヤ人が特別だから、とい
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