しかし、新型出生前診断が一般診療化されたり、近所のクリニックで学会の指導もなく行われたりするようになると、その倫理観のバランスも崩れていく心配があります。「みんなが受けているのだから自分も受ける」「みんながダウン症の赤ちゃんを堕ろしているのだから自分も堕ろす」というふうに、私たちの意識が変化していったらそれは怖いことだと思います。 出生前診断には、劣っている者を排除しようという「優生思想」が背中合わせになっていることを忘れてはいけません。そして、「健常児を授かる」ことを最優先とし、優生思想を正当化してしまうことがいかに危険か、私たちは意識する必要があるのではないでしょうか。 1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster