「兄ちゃんはアメリカが好きなんか?」 筋骨隆々の作業員の人にそう言われ、軟弱大学生だった僕は「いや、そういうわけじゃないんですけどね」とえへらえへら笑うだけだった。 大学4年の夏休み、僕は大学の研究室から派遣され、九州で地熱探査の調査にあたっていた。勉強の一環でありながら、バイト代も出るという美味しい体験。 熊本空港から入り、阿蘇山を越えた辺りの九重地域に調査隊はベース基地を設けていた。この調査はMT法と呼ばれる地熱探査の実用化を調べるもので、ベースキャンプに残る一隊とそこから50km、100kmと直線距離で離れた地域まで調査車で出向き、比抵抗を計測する隊とに別れて行動していた*1。 利用する光ケーブルはそこそこ重く、それを運ぶための作業員の方は地元で雇われた方々だった*2。冒頭の質問はその作業員からのものだ。 九州に発つ前、僕はようやく内定をもらっていた。 バブル期のため、よほど贅沢を言