今年2月20日、早朝6時50分の東京都心。駅を目指すサラリーマンがコンビニエンスストアに滑り込んでくる中、現金自動預払機(ATM)の前に黒いピーコート姿の女性が立った。 目深にかぶった黒のキャップと大きなサングラス、赤いマフラーで口元を隠しているのでわかりにくいが、彼女は日本人ではない。 ルーマニア国籍を持つ23歳のSは、吐き出された一万円札の束を肩掛けバッグに放り込み、キャッシュカードを引き抜いた。 不思議なことに、彼女の手に握られたカードには銀行名が印字されていない。Sの名前も、ほかの誰かの名前も刻印されていなかった。「偽造キャッシュカード」である。 店を出た彼女は、足早に次の「標的」を目指す。半日後、10数店舗のコンビニをハシゴしたSは、数千万の現金を手にしていた。 その日、偽造キャッシュカードを握りしめて都内のATMを駆け回ったのはSだけではない。ルーマニア人を中心とした12人の男