主人はシンガポールに頻繁に旅行に向っていたのですが、 それは遊びの為の旅行ではなかったのです。 収入を得るために、私に内緒であんな危険な出稼ぎをしていたなんて。 「オ客サン、コノ先危険ネ。ゴールデンオオアリクイ出ルヨ」 「おれはそのゴールデンオオアリクイに用があるんだよ」 シンガポール島から東200kmに位置するテコング島。おれはここに、伝説の生き物を捜し求めやってきた。 名をゴールデンオオアリクイという。14世紀のジャワの記録をはじめ、ラッフルズの手記、そして大東亜戦争での日本兵の証言に数点の記録が残る伝説の生き物。時の中将パーシバルは「最も天国に近い生き物」と称している。 だが、そういったプラスのイメージに反して、現地民の間では「死の象徴」として扱われているフシがある。いったいその差は何なんだ? どうして真逆の評価が下される? おれはこれを確かめる必要がある。行かなくちゃいけないんだ。