分量は全頭髪のわずか10%にも満たない、そんな微量の毛束を人は『前髪』と呼ぶ。 古来より人の前髪は象徴的に扱われてきた。 まだあげ初めし前髪の、と藤村の詩にもあるように、切り揃えていた前髪を日本髪に結い上げ、額を出すのが少女から女性になる、一種の通過儀礼だった。 前髪=子どもと大人の境界だったのだろう、昔の日本では。 そして現代。 終わりかけた平成の世に、いまだ前髪に悩む女が一人… 私の前髪どうしよう? 切るの切らないの斜めなのまっすぐなの? 定期的に訪れる、前髪切りたい期の襲来である…! 今思えば規則で縛られた学生時代のオンザ眉、イモト風前髪は壊滅的に似合わなかった。厳しい校則から解き放たれた20代の私はその反動から前髪を伸ばし、斜めに流し、一つ結びやお団子ヘアにしていた。 このヘアスタイルの利点は「美容院に行くのが最低限で済む」である。 当時は黒髪だったのでプリンになることもなく、毛先