iPS細胞(新型万能細胞)の「S」は「幹」を意味する。我々の体の中には「幹細胞」という細胞がある。 たとえば、世界で最も臨床応用が進んでいる「造血幹細胞」は骨髄の中にあり、自らと全く同じ細胞を複製し続ける「自己複製能」と、白血球や赤血球、血小板といったすべての血液細胞に変化できる「多分化能」を併せ持つ。 ただし、通常は血液細胞以外の細胞には変化できない。 ES細胞(胚性幹細胞)は、マウスで1981年、人間で98年に作られた。ほぼ無限に増える自己複製能に加え、神経や心筋、肝臓などすべての細胞に変化できる能力を持つ。発明者は2007年にノーベル賞をとった。 だが、受精卵を破壊して作るため、医療に応用する場合は、倫理的な問題を避けて通ることはできない。患者本人の細胞からは作れないので、ES細胞から作った心筋細胞などを移植する場合、白血球の型が完全に一致していないと、拒絶反応が起きる。 ◆「先祖返