価格メカニズムの活用なくして、地球温暖化防止、そして低炭素社会づくりは進まない。日本をはじめ、多くの国で経済運営の中心的な機能を担っている市場に、温暖化抑止機能が組み入れられなければ、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG)の大幅削減は、難しいと考えるからである。 一般に、環境政策に価格メカニズムを活用する場合、いくつかの手段・方法がある。伝統的に最も頻繁に活用されてきたのは、補助金である。また、環境税の理論が生まれたのもかなり古く、1920年に英国のケンブリッジ大学のA.C.ピグー教授によって、著書『厚生経済学』のなかで提示されていた。この二つの手法に対して、排出権取引制度は1960年代後半に提唱されたもので、比較的新しく、かつ現実に具体化されるのが早かったことは前回の「 排出権取引制度と初期配分:『オークション方式』採用するEUの真意 」で述べたとおりである。 これ