「天国と地獄ってあると思う?」唐突に彼女が聞いてきた。いつものことだ。彼女はいつもそのことばかり考えている。同じ質問を何回してきたのかわからないほどだ。その時々の気持ちでやはり唐突に湧き上がる思いを自分の中に収めるのが苦手なのだ。 「僕はないと思っている」それもいつもの返事。その答えを聞いているようには思えずに彼女は続けて言う。それもやはり毎度のことだ。 「天国と地獄がないと思っているからこそ、いえ、ないと思えば何でも悪いことができるようになるよね」 「そんなことないんじゃないかな。たとえば、君は天国と地獄がないとしたら、悪いことなんでもできるの?」 しばらく考えているようなそぶりを見せるが、僕には彼女がどう切り替えしてくるのか知っている。 「あなたは天国と地獄があることを信じていいない」 「うん」 「神様っていると思う?」 やはり僕の質問を流したのだ。僕は彼女が天国の有無に関わらず、僕の