日本ほど「潔癖社会」と形容するのにふさわしい社会はない。道路や住宅街にはゴミ一つ落ちていない。繁華街の吐瀉(としゃ)物は夜が明けるまでに全てがなかったかのごとく徹底的に拭き取られている。 秒刻みで運行される電車(特に新幹線などの高速鉄道)では、ものの1分とか2分とかで、散らかった座席が完全にリネンされている。消臭、除菌がことあるごとに周知奨励され、ウエットティッシュと温水洗浄便座の常備(完備)がもはや当たり前になった。そして頼まれてもいないのに、率先してゴミ拾いをすることが、国民第一の美徳のように崇(あが)めたてられている。 中国からマイクロバスでディズニーランドに寄った帰りであろう団体観光客が、千葉県浦安市内の何の変哲もない住宅地を熱心にスマートフォンで撮影していた。私はこの光景が余りにも気になったので、片言の英語で話しかけてみると、「街が本当にきれいなので珍しいから撮影した」と返答がく