戻る 憲法9条の成立経緯 西 修 1.はじめに 憲法9条について、その成立過程を中心に論述した著書は、いくつか存する*1。論稿も、数多く存する*2。しかしながら、発案の段階から最終的に9条として成立するまでの経緯を、極東委員会における文民条項導入のための審議状況をも含めて克明に記述した著書・論稿となると、ほとんどないといってよい*3。 政府の説にしても、いわゆる学界の通説といわれる学説にしても、成立の経緯をふまえた9条解釈はなされていない。これはまことに不思議な現象といわなければならない。さまざまの解釈が存在しているのであれば、その成立の経緯を詳細に検証することは、絶対に必要なことである。 多くの学説は、9条の平和主義を強調し、その行きつく先として非武装解釈をとっている。もちろん、9条が平和主義条項であることは疑う余地はない。けれども、私の最近の調査では、182の成典化憲法中149(8