「大学病院と小規模な病院を高速回線網で接続し、地方でも高度な遠隔医療を受けられるようにしたい」――。 こう意気込むのは、学術情報ネットワーク(SINET)を構築・運用する国立情報学研究所(NII) 副所長兼学術ネットワーク研究開発センター長の漆谷重雄 教授だ。NIIと日本外科学会などは2021年中に、約2000km離れた福岡市と札幌市の病院をSINETで接続し、遠隔医療の実証実験を開始する。国内拠点間を高速かつ低遅延に通信できるSINETは、学術用途にとどまらず、医療分野や教育分野、産業分野への応用に期待が高まっている。高速性や高い安全性を持つ新たな産業インフラとして活用できれば、さまざまな地域格差を解消する次世代通信網へ活用できる可能性がある。 SINETとは、日本で900以上の大学や研究機関などが利用する、学術情報用のネットワークだ(図1)。1987年に運用を開始し、現在は第5世代に当