▽本の価値呼び起こす これが未来の「本」なのだろうか―。東京都千代田区立千代田図書館が昨年十一月、全国で初めて手掛けた電子図書館「千代田Web図書館」。貸し出されるのは、紙の本ではなく電子データ。パソコンのモニター上に表示されるだけの「本」だ。 ▽出版社に抵抗感 「試しに一冊借りてみましょうか」と坂巻睦広報チーフ(33)が操作すると、ビジネス書の見開き二ページが画面に表示された。ページを繰る代わりに、クリックボタンを押し続ける。何だか味気ない。少なくとも、慣れ親しんだ本ではない。 「紙の本にとってかわるのではなく、選択肢が増えたと思ってほしい」。坂巻チーフは説明する。音声を発するため、目の不自由な人も使いやすく、語学習得にも有用▽書きこみができ、問題集として使える▽「蔵書」の保管場所やメンテナンスが不要で、破損や紛失の恐れがない―などの利点から、開館以来、自治体の視察が相次ぐ。