アメリカの大物作家、コーマック・マッカーシーが6月13日に亡くなった。彼の作品はコーエン兄弟の映画『ノーカントリー』をはじめ、『ザ・ロード』など映像化された作品も多く、映画からコーマック・マッカーシーという作家を知る人も少なくない。 彼の紡ぐ物語には強い暴力性とともに倫理観や道徳といった観念への諦めにも似た世界観が広がっており、マッカーシー作品の大きな魅力である。また読点や会話文に鍵カッコを用いない特異な文章世界も特徴で、特別な読書体験を与えてくれる中毒性の高い作品ばかりである。長年、コーマック・マッカーシーの独特な作品世界を巧みな翻訳で国内に紹介し続けている翻訳家・黒原敏行氏に、マッカーシー作品の魅力と、それぞれの作品についてお話を伺った。 (取材・構成=すずきたけし) ■コーマック・マッカーシーの作家性 © Beowulf Sheehan ——今回はコーマック・マッカーシーの作品を訳し