身近な駅から列車に飛び乗れば、線路がつながっている限り、どんな遠くへも私たちを運んでくれる。九州に初めて鉄道が通ったのは1889(明治22)年。以降、先人が汗水を垂らして敷設した鉄路は120年以上にわたり、私たちの暮らしを支えてきた。県内にはJR九州の日豊、久大、日田彦山、豊肥の4路線が敷かれている。災害で一部が不通となっている今、その重みを考えてみませんか-。 12月初旬、午前4時10分、宇佐平野にある日豊線の柳ケ浦駅(宇佐市)。空高くから月の光が駅舎を照らす。2番ホームには、せわしなく動くJR九州の制服姿の男性が2人。出発準備の整った6両編成の普通列車のモーターが震えだし、熱を帯びてきた。 中野浩一さん(58)は運転席に座り、両手にゆっくりと白い手袋をはめた。運転手の経験は約30年。この席には月1、2回座る。「今日も一つ一つ、時刻通りに」。意識は良し、計器も良し。ペアを組む乗務員とつな